新型コロナウィルス感染症(COVID-19)によって、私たちはこれまで経験したことのない事態に遭遇し、日々の生活を再構築する必要に迫られています。WASARAは今回から、飲食やホテル業界などで実際に使っていた人達にお話を伺い、これからの世界の姿を考えていきたいと思います。
記念すべき第一回目では、世界の名だたるエアラインの機内食を製造する「Gate Gourmet Japan Ltd. (以下、ゲートグルメジャパン)」にお話を伺います。昨年に放送された「ガイアの夜明け (※注1)」でも撮影にご協力いただくなど、WASARAにとってもかけがえのないパートナー企業です。
インタビューでは、コロナ禍のなか、航空業界にはどのような影響があったか、今後の機内食はどのように変わっていくかなどをお聞きします。
今回お話を伺った、ゲートグルメジャパン営業部の戸井さん
—まず、ゲートグルメジャパンさんのお仕事について教えていただけますか。
戸井 ゲートグルメジャパンは主に飛行機の機内食を製造している会社で、海外のお客様ですとユナイテッド航空やエミレーツ航空といったところに機内食を載せています。食器は基本的に航空会社側で仕様が決まっているので、それにうちがどう盛りつけるか、どういう内容のミールにするかという提案やプレゼンテーションを行っています。
—メニュー内容は、ゲートグルメジャパンさんがシェフと相談して決めているのでしょうか。
戸井 これは2パターンありまして、1つ目は、航空会社自社でお抱えのシェフが既にいる、ミールのコンセプトがあらかじめ決められていて、自分たちに預けてくれるパターン。海外の航空会社の機内食の場合は、現地の食材を輸入して使うこともありますが、基本的に日本で手に入れられる食材に置き換えて、コンセプトに沿った形だと我々はこういう風にできますよと提案をしています。
例えば、細かいことになると料理はグラム数まで指定があるんですね。お肉のグラム数とか、チーズのポーションのグラム数とか。日本の市場では無い物もあるので、国内ではこのようなものが主流ですよと、そっちを提案したり。プレゼンテーションの場で内容を詰めていきます。
もう1つは、自社提案のパターン。日本路線の場合は和食がやはり強いので、和食のシェフからミールを提案してもらい、プロポーザルという形でプレゼンテーションを行うこともあります。
—食材選びのお話が出ましたが、機内食でも旅行者に配慮したエクストラメニューもありますよね。
戸井 航空業界ではもともとレギュラーミールとは別に「スペシャルミール」のオーダーがあって、ヴィーガンやコーシャ、ハラル。あとはべジタリアンとか、フルーツプレートミールとか。特殊なシーフードミールや、ムスリムメニューをオーダーする方が海外からの旅行者には多いので、そういう需要はあります。
—スペシャルミールは、事前のオーダーが無いと対応できないですよね。飛行機にはある程度、準備されていたりするのでしょうか?
戸井 備蓄しているものもありますし、うちで急遽作れる体制も整えています。基本は、一日以上前にオーダーは確実に入れてくれと。つまり事前注文制ですね。でも、裏側の話なのですけど、予約注文がシステム上消えてしまい、ご搭乗されるお客様からのリクエストがある場合は対応できるものであれば急遽作ることもあります。
—日本のレストランでも、ハラルなどの宗教食は需要が高まっていますね。
戸井 弊社でも常時ハラル食の製造はしておりますが、スペシャルミールの中でも、ユダヤ教食「コーシャミール」は特に面白くて、国内では機内食用コーシャミール作っている場所が無いんです。どのケータリング業者も海外から輸入しているのが現状です。ユダヤ教には「ラビ(ヘブライ語: rabbi)」と呼ばれる指導者が居て、調理場で祈祷を行うのですが、お祈りする方がいない工場でどれだけ作業をしても、コーシャミールとしては提供することができない。今回は、航空会社様と弊社が自社工場内で新たにコーシャミール製造出来るかという話になり、皆で一から勉強し工場を準備することができました。日本初のコーシャミール工場として今後のニーズに期待しています。
—アレルギーとは意味合いが違って、宗教上の穢れをどう祓うかという戦いですね。
戸井 コーシャミールを作る場所を、他から隔離することはもちろんですが、鍵を開けるところから祈祷師がやる必要がある。そういう世界なんですね。また食材もコーシャ認定食材を使用しないといけないため、それらを見つけるだけでも大変な苦労でした。
—すごく厳格ですね。
戸井 卵をひとつひとつチェックして、中に血が入っていたらダメとか、それを取り除いたりもします。知識として、ハラルは有名になってきましたが、コーシャはなかなか浸透していない分野だと思います。コーシャキッチンの稼働開始を今すごく楽しみにしています。
—WASARAを使い始めて変化したことなどありますか?
戸井 空港に新しく就航するエアラインがあるときはケータリング業者間でテンダー(入札)を行うのですが、各業界の質問として、必要事項というか「サスティナビリティ」は特に問われるようになりました。うちの場合は、WASARAさんを出させていただいて、資源の有効活用によって環境への配慮を備えた業者と取引をしていますとか、実際にWASARAをプレゼンテーションや試食会の場で使わせていただいてアピールをしています。ロゴ入れもすごくポイントになってきていて、ロゴを置くことで、より注目してもらえます。クライアントのシンボルマークがあると、これはなんだ!となって、実はこういう環境への取り組みがあって…というストーリーを説明していくと、サスティナビリティじゃないか!と和やかな談話になりますね。
—国連のSDGs以降、環境に配慮しなくてはならない意識が強くなってきたかと思いますが、航空業界内での感覚としてはいかがですか。
戸井 ありますね。ストローも既存で積まれていたエアラインさんが、プラスティックストローじゃなくて、完全に紙のストローへ切り替えてきた例もあります。あとは、もともとコーヒーに使うマドラーをなくしてしまったところも。基本的にエアライン側は理由を言わないので、そういう流れなのかなって。
—まず、載せないということから始めるのですね。
戸井 飛行機に今まで乗せていたものを失くすこと、飛行機の上でのプラスティックへの配慮というのはとても難しい課題だと思います。もともとラップをしていたところとかは、まだ正直無くなっていないですね。代替え品となると「蓋」なんですが、蓋自体もプラスティックなんです。そこは今後のエアラインの課題点となると思います。
—1回のフライトでかかる機内食の食器洗浄ってどれくらいの規模なのですか。
戸井 うちは洗浄機を二つ構えています。だいたい飛行機の大きさにもよるのですけど、エコノミークラスとビジネスクラスは、食器の素材が違うんです。エコノミークラスはプラスチック類、元々の捨てない容器ですね、メラミンカップみたいな。ビジネスクラスは陶器で、その二つが混じってしまうと、温度の違いで乾くものも乾かなくなってしまいます。そこで、温度を別にしてビジネスクラスとエコノミークラスのカップやお茶碗を流して、一時間から一時間半かけて、お湯と洗剤と熱をかけています。コストもかかっていますね。それらを単にゴミで捨てられるのであれば、コロナへの対策にも繋がってくると思います。
一そんなに時間がかかるんですね。
戸井 飛行機がどんどん来ちゃうので、基本的に何時間も回し続けているんです。ダーティーサイドと呼ばれる「カートから取り下ろしてゴミを分けて置く作業」、クリーンサイドといわれる「洗浄した容器をパッキングする作業」にそれぞれ人がいて、飛行機の形態にもよるかと思うんですけど、少なくとも十人以上は必要です。
一飲食店の洗浄の規模感では絶対に間に合わない作業ですね。コロナ禍では、かなり厳しい状況に立たされているかとは思うのですが、影響はいかがですか。
戸井 まず、フライトが止まってしまっているということが大きな影響ですね。フライトが飛ばないということはお客さんも乗らないし、そこには食事も提供できない。早くフライトが再開してくれることを願うばかりです。 しかし、フライトが飛ばないからといって何もしないのではなく、機内食に頼らない違うことがないかということで、お弁当を作ったり、ディスポーザブルの容器にその場ですぐ食べられる快適なサンドイッチや、ジュースを詰めたりしています。
一今後、機内食の食器の選び方や提供の仕方はどのように変わると思いますか。
戸井 今の時点で直接エアラインさんとやりとりをしている中では、ディスポーザル(使い捨て容器)が使われるようになってきています。弊社のお客様のターキッシュエアラインズさんは、自社ブランド化した製品をすでに持っていらっしゃいました。自分たちのスナックボックスを作ろうと、オリジナル容器で、ミールのコンセプトを作って、ケータリング会社で使うという事例もあります。
ディスポーザブルだと、簡易的なメニューになってしまうのですが、これまでファーストとビジネスは「バルク」という、料理を一品ずつ乗務員の方々がサーブしていく方式から、エアラインにもよるんですけど、今後は接触を控えるために「ワンプレート」で、一回で置いてしまうというスタイル、なるべく接触を避けてリスクを下げる方式が多く出てきています。
一機内食でWASARAが新商品の開発を求められるとしたらどんな製品でしょうか。
戸井 WASARA製品や機内食のプレートにぴったり合う、魅力的な「蓋」ですね。海水に溶ける環境性能がある蓋とかが使えるといいなと思います。飛行機で一回に乗る旅行者は何百人もいて、それが何便も来ますからそのゴミの量も尋常じゃないですよね。それらも根本的な解決策が必要な段階だと思っています。
(注1)テレビ東京「ガイアの夜明け《さらば平成シリーズ(4) ニッポンの「超」技術》」2019年4月16日放送分
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